遺族は、故人のことをもっともよく知っている人に弔辞をお願いします。ぜひともこの人にお願いしたいと思って依頼するのです。ですから、弔辞を頼まれたときには決して固辞せずに快く引き受けるようにしましょう。
弔辞を引き受けたら、話す内容を考えます。「その場で思いついたことを自分の言葉で話せばいい」と考える人もいるかもしれませんが、これはマナー違反です。弔辞は葬儀後も喪家(故人の家)に保存されるので、しっかりと内容を考えて原稿を作成しましょう。また、長くなったり、途中でつまったりしないように、必ず原稿を用意します。
弔辞を読むのは1~3人の場合が多いのですが、どのくらいの長さにしたらよいのかを、世話役と打ち合わせます。ひとり3分間くらいが一般的ですので、400字詰めの原稿用紙で2~3枚を目安にしましょう。原稿ができあがったら、事前に時間を計りながら読んでみることも大切です。
また、世話役から、内容が重複しないようにお願いされることもあるので、そのときは指示に従いましょう。3分間で収まらなければ、どこか削るところがないか、考えましょう。
目次
弔辞の原稿の書き方
弔辞は、故人の冥福を祈るとともに、遺族の悲しみを慰めるものです。故人への気持ちを込めながらも、あまり感傷的になりすぎないように気をつけましょう。
もちろん、いたずらに美辞麗句や常套句を並べたてただけの形式的な文章にならないようにします。かしこまって無理に難しい言葉を使わずに、ふだん話しているような口語体を使い、自分の言葉で書きましょう。
弔辞は正式には巻紙に薄墨で書いて奉書紙に包みます。本来は毛筆で書くべきです筆が使えない場合にはペンなどでもかまわないでしょう。便箋に万年筆で書いたものを奉書紙で包むこともあります。
最近は、ワープロで作成したものを白い封鄒に入れるというケースも見受けられます。代筆してもらうくらいなら、下手でも自分で書きたいという気持ちも大切です。
弔辞を書く際のポイント
①あいさつ・呼びかけ
最初に、故人に対する呼びかけを行います。
「慎んで○○君の御言前に申し上げます。○○君、僕が友人を代表してこのようなお別れの言茱を申し述べなければならないのは、この上ない悲しみであります…… 」
②訃報への驚きと悲しみ
死を知った経緯や、驚きを率直に語ります。
「昨日、君の突然の訃報を受けて、僕は心の支えばかりか生きる意味さえも失ってしまったかのようで…… 」
③生前のエピソード
故人の人柄が偲ばれるようなエピソードや功績などをなるべく具体的に紹介します。失敗談を紹介する場合には、最後にプラスに転じる様な展開にします。
「実にスポーツマンらしい爽やかな人柄で、誰からも好かれ…… 」
「君の独創力は比べるものがなく、△△△を発明し、わが社の発展に大きく貢献した功績は…… 」
④遺族へのお悔やみと励まし
遺族に対してお悔やみを述べて励ましの言葉をかけます。
「ご遺族の方々のお嘆きを察するとお慰めの言葉もありません。特に高齢のご母堂様のご胸中はいかばかりか…… 」
⑤誓い・別れの言葉
故人に感謝の気持ちを告げ、冥福を祈ります。別れを呼びかけて結びとします。
「君の遺志をしっかりと受け継ぎ、立派に生きていくことをここに誓います。○○君、いよいよお別れです。さようなら。ありがとう」
弔辞の読み方
司会者に名前を呼ばれたら祭壇の前に進み、遺族と遺影に一礼し、弔辞を聞き、落ち着いて読み上げます。最初に「弔辞」と言ってから、故人に語りかけるよう、遺族や参列者にも聞こえる様に、ゆっくり、はっきりと読み上げます。
スピーチに自信のある人でも、事前に一度、誰かに聞いてもらうかテープに録音して聞き直してみるといいでしょう。耳で聞いてわかりやすい言葉を選ぶことも必要かもしれません。
うまく話すコツは低く静かに、ゆっくりと一語一語噛みしめるように話すことです。早口にならないように注意します。感情を表そうとしてわざとらしく盛り上げる必要はありません。心を込めて、丁寧に読むことが大切です。
途中で涙がこみあげてきてしまったときには、いったん言葉を切って、息を大きく吸い込みます。読み終えたら弔辞を元のように包み直し、祭壇において戻ります。