特定の宗教・宗派の方式によらない葬儀を「無宗教葬」あるいは「自由葬」などといいます。僧侶による読経や焼香などの宗教的儀式をまったく行わず、楽器を演奏したり食事をしたりする、文字通り自由なスタイルの葬儀です。
もちろん葬儀を無宗教で行うことに、法的な問題などはありません。法律で定められているのは、24時間以内には火葬できないこと、死亡届を提出すること、埋葬する場合には墓地に埋葬することだけです。
では、どのような人が無宗教葬を行うのでしょうか。ひとつは、もともと特定の宗教を信仰していないケースです。日本では無信仰でも何となく仏式で行うことが多いものです。しかし、特別に信仰しているわけではないのに、仏式で葬儀を行うことに疑問を感じる人もいるでしょう。
また、檀那寺があっても、故人の意思で無宗教葬を行うこともあります。あるいは、参列行が非常に多い場合や、遺族の中で宗旨の対立などの問題がある場介にも、無宗教非であれば問題が起こりにくくなります。
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無宗教葬の問題点
無宗教葬の最大のデメリットは、周囲の理解を得ることが難しいという点です。私たち日本人には「葬式は仏式で行うものだ」と考える人が少なくありません。
たとえ本人が無宗教葬を営みたくても、家族が反対していれば実現できませんし、親戚や親しい友人などの理解が得られなければ、あとあとしこりを残すことにもなります。
対策としては、エンディングノートなどに書き残すなどして、本人が生前に意思表示をすることです。遺族に『父の最後の願いですから』と言われれば、親戚も聞く耳を持たないわけにはいきません。法的な拘束力はありませんが、遺言に記すのも有効です。
無宗教葬では戒名が受けられませんから、菩提寺の先祖代々の墓に埋葬できないこともあります。どうしても埋葬したければ、菩提寺と相談しなければなりません。また、菩提寺がない場合には、宗教・宗派を問わない公園墓地などを購入すれば問題ありません。
無宗教葬は慣習や伝統にしばられず自由度が高いだけに、プランニングが難しいもの。故人の意志を尊重した式にするためには、生前に本人の希望をしっかり聞いておくことが大切です。無宗教葬の経験が豊富な葬儀社に相談するという手もあります。
無宗教葬のメリットには次のようなものがあります。
- 慣習や伝統にしばられずに、故人や遺族の意思が尊重できる。
- 自分たちでプランニングするので、心を込めて見送れる。
- 故人の生前の仕事や趣味、人柄に合った葬儀が企画できる。
- 祭壇などにかける費用を自由に決められます。
- 遺族や参列者に宗教的な問題があっても全員が参列できる。
部分的に宗教葬を取り入れる場合
どうしても親戚などの同意が得られない場合や、先祖代々の墓に埋葬したい場合には、宗教葬と無宗教葬の混合で行うなどの方法もあります。たとえば、通夜と葬儀は仏式で行い、告別式は無宗教で「お別れ会」などのスタイルで行うのです。
逆に、通夜と葬儀を身内だけで自由に行い、告別式を宗旨によって行うという方法もあります。あるいは、戒名だけ受けておき、通夜と葬儀は自由に行い、納骨の際に宗教儀礼を行うという方法もあります。いずれにしても檀那寺や家族、親戚の同意が必要です。
無宗教葬の進め方
無宗教葬を行うには、どのような準備をすればよいのでしょうか。その一例をご紹介します。
式場
式場は自宅でも斎場でもかまいません。「お別れ会」のようなスタイルならホテルでも可能です。楽器を演奏したりする場合には、前もって式場に相談します。
祭壇
祭壇は最低限必要なアイテムです。通常は葬儀社に依頼して、無宗教形式の祭壇を設けます。心得のある人がいればお願いしてもかまいません。
遺影
故人らしさが表れているものを選びましょう。ある程度の年齢になったら、遺影のために撮影をしておくのもいいものです。
無宗教葬にはしきたりがありません。そのぶん、しっかりとしたプランニングをしておかないと、ただタラタラとした、しまりのないものになってしまうので注意が必要です。
「故人が好きだった音楽を流す」や「ワインを飲みながら思い出を話す」というだけでは「式」にはなりません。堅苦しい式次第は必要ありませんが、最低限の「儀式」があったほうがメリハリがつきます。
たとえば、僧侶の読経のかわりとして、家族が故人の思い出話を語ったり、故人の子どもや孫が手紙を読んだりしてもいいでしょう。故人と親しかった数人にお別れの言葉をお願いしたり、故人の生前の姿をスライドやビデオで上映するという方法もあります。
混乱を避け、いい葬儀にするために、司会者は必要です。適任者がいなければ葬儀社に相談しましょうよう。葬儀後の、出棺や火葬については、仏式などのケースと同様に行います。